「人は優しい」
ギフト経済ラボは、世界のエネルギー問題に象徴されるような、取る、奪う、囲うということではなく、お互いが優しさを贈りあう、渡しあう、与えあうだけで成り立つ経済、というものを100年後の未来という観点から研究しています。
この動力は、前の人からもらったモノ(優しさ)を、別の人におくるというペイフォワード(恩送り)です。
うつ病患者100万人、自殺者毎年3万人、若年無業者64万人、大手企業の1万人規模のリストラ国の借金1000兆円、社会保障費の増大、政治不信・・繋がりが希薄で、不安と恐れが蔓延する日本
今までは、取る、奪う、囲うことにより生活を維持しようとしてきました。そして、行政サービスすら消費、交換をする感覚になってきていると感じます。
これからは、渡す、与える、分かち合う「ギフト」で成り立つ仕組みが必要となります。
心が孤独、孤立した状態では、お金をいくら稼いでも実は安心することができません。
逆に、深く信頼できる繋がりがあれば、経済的余裕はなくても幸せに暮らすことができます。
(これは、ポジティブ心理学などのデータによっても証明されています)
これからの日本では、人が繋がりあい、一人ひとりが自分らしく優しさを渡しあうことで成り立つ社会になっていくのだと思います。そういった社会は、行政が背負っていることも一緒に背負い、社会課題も未然に予防されている社会だと思っています。
「恩送り」を、「経済」「お金」というの文脈で考えてみたいと思います。
日本には「1600兆円」の個人金融資産があります。これはものすごく大きな金額です。そんな日本人が亡くなる時に、一体いくら持って亡くなるのか、ご存じでしょうか?
日本人が亡くなる時に、平均して一人あたり「3500万円」もの金額を持っている亡くなっている、というデータがあります。(ちなみにイタリア人はほぼ0円です)
なぜ、日本人はこんなにもお金を貯め続けているのでしょうか?「足るを知る」ことはないのでしょうか?
多くのお年寄りが、年金を預貯金に回している事実があります。笑い話ですが、昔、「100歳100歳」のCMで有名なきんさんに「なぜ預貯金しているのですか?」と聞いたところ「老後の不安に」と答えたという話しも聞きました。
その大きな理由としては、「不安」と「怖れ」だと思っています。金銭的には余裕があるはずの人たちでも、どこかに「不安」と「怖れ」があり、「ため込む」という行動をとってしまうのではないでしょうか。
そこで、ギフト経済では、恩送りで深い繋がりを作り、不安や怖れなく、give&giveできる社会を目指したいと思っています。
もしもそういった恩送りの気持ち溢れる方が増えたなら日本は、世界は大きく変わると思っています。
例えば、お金だけで考えてみても、個人金融資産1600兆円の1%だけでも恩送りで出てくれば、実に「16兆円」にもなるわけですから、日本の税収が年間40兆~50兆円程度であることを考えても、インパクトのある数字であることがわかります。
そういったインパクトを、一人ひとりの心の変化から起こそうとラボでは研究しています。
2012年より、数名の仲間が集まり「ギフト経済ラボ」を始めました。
これは、エネルギーや資源問題に象徴されるような、取る、奪う、囲う、ということではなく、お互いが優しさを渡しあう、贈りあうだけで成り立つ経済、というものを100年後の未来という観点から研究しています。
この動力は、前の人からもらったモノ・コト(優しさ)を、別の人におくるというペイフォワード(恩送り)です。 (恩送りについて詳しくは、このページの最後に記載します。)
さて、このギフト経済ラボの最初のプロジェクトをご紹介します。「カルマキッチン」といいまして、アメリカやインドなどに広がっている活動なのですが、場所はレストランでおこなわれます。 レストランに入るとこう定員さんから言われるのです。
「これから、あなたの食べる食事は前の人からのギフトです。」
つまり食事や場に対して、何らお金を払う義務がありません。ただ、次ぎの人に優しさを繋ぎたいという思いがある方が、次の人のためにお金や優しさを残す、というシステムです。
これを、日本版カルマキッチンとして、2012年5月に恵比寿で実施し、約60人の方に喜んでいただきました。実際にお金も、原価をはるかに上回る金額が残りました。このような、人間の優しさを信じ、いろいろな創発が起こる場を「ギフト経済ラボ」では仕掛けていきたいと思っています。
そこで、一つ構想ができました。「ギフトカフェ(仮)」というものです。このカフェは、「インキュベーション+コミュニティカフェ」という感じで、子どもから、近所の主婦やお年寄り、そして、働くフリーランスや起業家、会社員などが集い対話をすることにより、繋がりがうまれ、個人や社会の課題が解決したり、アイデアが創発され新たなコラボレーションやイノベーションが生まれるものをイメージしています。
そこは「優しさ」で成り立つ場所なので、子どもなどにはチャージすることなく、お金がある人はお金で、動ける人はボランティアで、子どもは笑顔で、という感じで、優しさの持ち寄りで運営できるようにしていきたいと思っています。
例えば、カフェの内装もできれば大工さんや社会人など共感してくれる人と一緒に作りたくて、木材なども、ご縁のある山林の間伐材で作ったり、お金の一部をクラウドファンディングで集めたり、無農薬野菜やお米は、自分の妹(自給自足しています)や繋がりから提供してもらったり、料理研究家の先生に料理メニュー開発してもらったり、観葉植物を私が育てて、増やし、来た方に里子として持って帰ってもらったりと、いろいろアイデアがあります。
きっとこの実験が日本全体に大きなメッセージを伝えられると信じています。 そんなことを仲間と夢を見ながら、ギフト経済ラボをスタートさせました。 ぜひこれをご覧のあなたもラボの仲間になりませんか?
恩送り(おんおくり)とは、
誰かから受けた恩を、直接その人に返すのではなく、別の人に送ること。(ウィキペディア)
ですから、恩を受けた人に返す「恩返し」とは違います。
また、「恩送り」という言葉は江戸時代からあったようです。
「相互扶助」、長屋な「向こう三軒両隣」「隣組」というものが根付いていた江戸時代ではとても自然だったろうなと思っています。
ビジネスの世界は、価値と価値との交換なので恩返しに近いと思います。
恩送りは、受けた相手ではない違う相手に渡す。なので、見返りを求めるわけでなく、ただただ贈る、送るわけです。
こういった人と人の優しさで成り立つ社会こそ持続可能な社会ではないでしょうか?その仕組みこそ、恩送りを使ったギフト経済だと思うのです。
さて、その恩の循環が広がっていくことをとてもわかりやすく表現している映像がありますのでぜひ見てください。
恩送りでいいこと。それは優しさを受け取りやすくなるということです。
日本人に多いと思いますが、恩・優しさをもらう場面になると、つい「そんなの受け取れません」「結構です」と、せっかくの優しさを拒否してしまうことがあります。それが、恩送りを意識すると、素直に受け取れるようになります。
素直に受けとって「ありがとう~」と言うと、とても幸せな気持ちが出てきます。また、ギフトを受け取ることから、「ギフトをもらえる自分」「大切にされている自分」を感じることでしょう。
そして、ギフトを受け取ることで溢れ出てきた優しさを、今度は貴方が、次の人や次の世代の子どもたちへと送ればいいのです。
ただ、「恩送り」を意識する、「恩送り」することを決めるだけで、人からの優しさ・ギフトを受け取りやすくなり、素直に受け取ると感謝とともに優しさが溢れてきて、他の誰かに送りたくなる。その循環、連鎖が起こってくるわけです。こうした循環はとてもパワフルな広がり方をしていきます。
また、恩送りは身近な小さなことでかまいません。高邁で大きなものである必要はないのです。自分の「心の幸せ」をコップで表現すると、コップの幸せが足りない状態では、恩送りをしたら辛くなっていきます。そうではなく、幸せがコップから溢れたなら、溢れこぼれた分を他の人と分かち合い、送ればいいと思うのです。そうすることにより、無理なく持続できる恩送りができるようになります。
おすすめの「恩送り」のやり方は、すごくすご~く簡単です。
例えば、社会人になると皆さん、部下や後輩におごることありますよね?
おごった時に、部下やおごられた人は「ご馳走様です!!次回はぜひ私に払わせてください!」などと言うと思います。
そこで一言。
「いいよ、恩送りで。」
「貴方が同じ立場になった時、後輩や部下に同じことをしてあげてほしい」
と言ってみてください。
部下から「すごくかっこいい!」って思われること間違いなしです(笑)
こういう形でもいいので、恩送りが広がっていくことを願っています。
ぜひ頻繁に使ってみてください。
恩送りで生まれるもの。それは「感謝」だと思っています。
ところで、巷でよく聞く感謝は、本当の感謝でしょうか?
コンビニやスーパー、どこで買い物をしても「ありがとうございます」とは言われます。でも本当に感謝の気持ちがのっていることはあまり多くないのではないでしょうか。
「ありがとう」がマニュアル化されていることも理由の一つですが、もう一つの視点としては、「価値と価値と等価交換だから」というポイントもあります。現代の一般的な貨幣経済やビジネスでは、価値と価値との等価交換が基本ですので、提供された価値の分、見合った価値をお金としても払っている、ということがあります。そこでは「等価」なので「対等である」という考え方も生まれやすくなります。「対等であり、当然だ」と思ってしまっては、なかなか感謝の気持ちは生まれにくくなります。また、現代の一般的なビジネスでは、商品の価値を商品そのものだけを見て、買うかどうかを判断するので、その商品の裏にある背景や物語、プロセスなどが伝わりません。そういう背景やおもいなどが見えにくくなってしまうのも感謝が生まれにくい理由なのです。
それがギフトやギフト経済だとどうなるでしょう?ギフト自体が当たり前の行動ではないですし、人間の人となりがわかる状態でギフトをおくられるので、しっかりとおくる人のおもいものっかり、心からの感謝が生まれるのだと思います。
自分にも、相手にも、本当の感謝ができるのが恩送りだと思っています。
その究極の到達点はどこかと考えてみました。
それは、
生まれてきたことへの感謝であり、
生かされていることへの感謝。
また、「私は私で良かった」ということへの感謝ではないかなと思っています。
ここまでいくと、幸せのコップは溢れ続け、周りの人を幸せにし続けられる状態なのだと思います。
ただ、いきなり生まれてきたことへの感謝は飛びすぎている感じがすると思います。
感謝にも段階やプロセスがあると思っていますが、まずお勧めしたいのは、「自分自身がギフトをもらい続けている」こと、「自分の周りはギフトに溢れている」ことに、気がついてみることから始めてみてはいかがでしょうか。
さて、これまで、周りからギフトをもらい、感謝することなどをお伝えしましたが、もう一つの視点をお伝えしておこうと思います。
それは、「自然がギフトしてくれている」ということです。
私たちは、土地を区切って、私有や所有を主張していますが、元は地球のもので、現在も地球のものです。
その地球は、雨を降らせてくれ、土には栄養がしみ込み、太陽は明るく照らしてくれ、植物や野菜などが育ちます。そして、それを私たちはいただいているのです。
つまり、ずっと私たちにギフトし続けているのが、地球であり、宇宙なのです。
そして、地球からのギフトは何も「奪うこと・取ること」をしていないのです。
プラスチック製品では、石油などを必要としていますが、この植物などが育つプロセスでは「奪うこと・取ること」がありません。だから、取りすぎることなく循環さえ意識できれば、持続してギフトをもらい続けることができるのです。
そして、この見返りなく、ただただ与え続けるギフトこそ「純粋なギフト」だと感じています。
この「純粋なギフト」を体感すればするほど、天や神、サムシンググレート、偉大なる何か、への感謝になってくるのではないかと思っています。
そうなると、「生きているのではなく、生かされている」「私は私として生まれてよかった」という究極的な感謝へとシフトしていくのではないか、と思っています。
ただ、「究極的な」と書きつつも、究極なので、当然にラボの私たちもそこには到達していないことも付け加えさせていただきます。あくまで私たちが想像する「究極的な感謝」ということでご理解いただければと思っています。
上記内容は、まとまりなく書かせていただきましたが、こういったことも、ギフト経済ラボでは話し合い、学びあって、進めていっております。また、どこかのタイミングではきちんとした文章やレポートでお伝えできればとも思っています。
このギフト経済ラボでは、こういった恩送りの仕組みを使った団体や活動などもご紹介していきます。
また、皆さんの知っている情報も集めたいと思っていますのでよろしくお願いいたします。
「NPO法人ブラストビート」という社会教育プログラムを提供している団体があります。
対象は、高校生や大学生たちで、3ヶ月以内に音楽イベントをプロデュースし、寄付をするプログラムです。
その若者に寄り添いサポートする「メンター」という役割を一般の社会人や大学生がやっており、全て無償のボランティアです。
つまり、自分の今まで前の人から受けた恩を、後輩や次世代に送る(贈る)という気持ちでやっているわけです。
そして、その恩を受けプログラムをやった若者の3~4割は、「自分も後輩に恩を送る」とメンターをやっています。また参加学生が社会人になった時に、お金でもNPOを支えくれる会員になって寄付を始めている人間も出てきています。
●【greenz.jpの記事】
「ブラストビート」が若者×音楽×社会貢献で目指すのは、つながり×恩送り×一人ひとりの幸せ!
http://greenz.jp/2012/06/20/blastbeat-3/
●ブラストビートWEBサイト:http://www.blastbeat.jp/
渋谷のある居酒屋さんなのですが、ボトルキープが少し変わっています。
それは、「お金のない人、若者などにお酒を飲ませてやりたいボトル」なんです。
このありがとうボトルは、主にお店の常連さんがおろしていくらしいのですが、他の若者などに飲ませたいおもいでおろしているので、ボトルを見てお酒が減っていくと喜ぶというのです。
通常ですと、キープボトルのお酒が減れば、「またお酒をおろさなきゃ・・・」と思うはずですが、ありがとうボトルは減れば減るほど喜んで、「マスター、今回はどんな人が飲んでいったの?」なんて嬉しそうに聞いてくるそうです。
おそらく、飲んだ若者と、おくった常連さんとの繋がりができた例もたくさんあると思います。
● 松浦 貴昌(まつうら たかまさ)
株式会社 フィールビート 代表取締役
NPO法人 ブラストビート 代表理事
16歳~26歳までバンドマン(経験職種は30以上)。その後、大前研一のアタッカーズ・ビジネススクールのスタッフを経て、マーケティング会社「株式会社フィールビート」を立ち上げる(2006年6月)。その傍らでNGO・国際協力活動(カンボジア・フィリピン)をする。2009年より、NPO法人ブラストビートを代表理事として立ち上げ、若者の「生きる力」教育に力を入れる。
●大村和広(おおむら かずひろ)
学生時代に、将来のやりたいことがわからなくなり、旅に出る。チベット、インド、アフガニスタンなど直感に従って7ヶ月の放浪。キリマンジャロ登頂、10日間の瞑想など、動けば変わるが信条。現在はは毎日別の人とランチをしながら、一人一人とのコミュニケーションを大事に。趣味はコーチングと焚き火。人がチャレンジする姿が何よりも大好き。
●石丸 弘(いしまる ひろし)
NPOハートフルコミュニティ代表
株式会社びりかん スタッフ
マーケティング・組織のコンサルテーションを行う傍ら、2008年より、「平和が広がる」をコンセプトに「小さな優しさ展」「ハートフルコミュニティ」「素敵な幼児教育コレクション」「GNH研究所」など50以上のソーシャルグッドな活動に関わる。→ http://heartfull-community8343.jimdo.com/
●河村 和紀(かわむら かずのり)
一般社団法人 ヤマイエヒト 代表理事
TEDxTokyo Social Media Team
田舎の地の力を都市で働き生活する人が享受する機会を増やすことでライフスタイルの多様性を生み出すことが目的にヤマイエヒトを設立。その他、映像コンテンツ、ドキュメンタリー制作生業としている。
●笠井成樹(かさい しげき)
慶應義塾大学SFC研究所 所員
社会創発塾 塾頭
一人ひとりが自由な意思をもち、自身や周りの可能性を広げられるように、また人の可能性が奪われている環境を変えるために、あらゆる手段を通じて活動しています。
※、初期の立ち上げメンバー以外にも、現在では多くの仲間がギフト経済ラボに参画してくれています。
ギフト経済ラボが運営する「カルマキッチン」や映画 「Money&Life」の上映会などのイベント情報はギフト経済ラボ もしくは カルマキッチンの Facebook ページを確認願います。